フェンの宝箱

2023年01月22日

多くの人々がフォレスト・フェンがロッキー山脈に隠した宝箱探しに夢中になり、中には仕事を辞めたり、貯金を取り崩したりして、一獲千金の夢に賭ける人々も現れました。

リーマンショックが引き起こした世界的な不況の影響もあったといわれます。

そして、フェンの宝箱探しの影の部分ともいえる犠牲者を出しました。

最初に亡くなったのはコロラド州の53歳のトレジャーハンターの男性で、2016年1月に行方不明となり、6か月後にニューメキシコ州のリオグランデ川沿いで遺体が発見されました。

遺体に損傷はなく、低体温症か脱水症が死因とみられています。

翌17年6月にはイリノイ州の54歳の男性がモンタナ州のイエローストーン国立公園の急斜面を150メートルにわたって滑り落ち、亡くなりました。

同じ月にはコロラド州の52歳の牧師がリオグランデ川で発見されています。

さらに翌7月には、1年前にコロラド州に引っ越した31歳の男性が、同州のアーカンソー川で水死体で見つかりました。

男性は1カ月前に友人3人と一緒に乗っていたボートが転覆し、行方不明になりましたが、友人たちはことが公になるのを恐れてすぐに通報しなかったそうです。

2020年3月にはコロラド州の53歳の男性の遺体が、ユタ州との国境に近いダイナサウルス国定公園で見つかりました。

2日前に一緒にスノーモービルを借りて行方不明になっていた65歳の男性は病院に運ばれ、命を取り留めました。

亡くなった5人はいずれも家族や友人たちにフェンの宝箱を探しに行くと話しており、探索の途中で事故に遭ったか、遭難したものとみられています。(この項続く)


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(11:00)

2023年01月20日

フォレスト・フェン氏が宝箱の隠し場所のヒントを記した詩を試しに訳してみました。

意味不明な箇所、どう訳したらよいのかわからない箇所が幾つもあり、参考程度に留めてください。

ネット上ではさまざまな解釈が示され、専門の本も出版されているようです。

As I have gone alone in there
And with my treasures bold,
I can keep my secret where,
And hint of riches new and old.


私はそこへ一人で行ったのだから
そして、大胆にも私の宝と一緒に
どこなのか私の秘密を守ることができる
そして新旧の富についてのヒントも

Begin it where warm waters halt
And take it in the canyon down,
Not far, but too far to walk.
Put in below the home of Brown.


温かい水が止まるところで始めなさい
そして渓谷の下へ運びなさい
遠くはないが、歩くには遠すぎる
ブラウンの家の下に置きなさい

From there it’s no place for the meek,
The end is drawing ever nigh;
There’ll be no paddle up your creek,
Just heavy loads and water high.


そこからは、臆病者のための場所はない
終わりはすぐそこまで近づいている
あなたの小川を漕いで上ることはないだろう
重い荷物と高い水位があるだけだ

If you’ve been wise and found the blaze,
Look quickly down, your quest to cease,
But tarry scant with marvel gaze,
Just take the chest and go in peace.


あなたが賢く、その炎を見つけていたら
素早く見下ろし、あなたの探求は終わる
しかし、驚きの眼差しでほんの少し待ちなさい
宝箱を手にして、心安らかに行きなさい

So why is it that I must go
And leave my trove for all to seek?
The answer I already know
I’ve done it tired,and now I’m weak.

なぜ私が行かなければならないのか
そして、すべての人が探すよう私の宝を置かなければならないのか
その答えを私は既に知っている
私はそれをして疲れ、今は弱っている

So hear me all and listen good,
Your effort will be worth the cold.
If you are brave and in the wood
I give you title to the gold.

だから、私のすべてを聞いてしっかりと耳を傾けなさい
あなたの努力は寒さに見合う価値があるだろう
あなたが勇敢で森の中にいるなら
私はあなたに黄金への称号を与える(この項続く)

(08:00)

2023年01月19日

今回はさかのぼって、フォレスト・フェン氏(1930~2020年)とはいったいどんな人物なのか、どうして自分の財産をもとにした宝探しを仕掛けることになったかを見てみます。

ウィキペディアなどによると、フェン氏は米空軍の元パイロットで、ベトナム戦争では年間に328回も出撃し、シルバースター勲章を受章しました。

退役後はニューメキシコ州サンタフェで古美術店を経営し、アメリカ先住民の絵画や工芸品などを取り扱い、600万ドルもの年商があったそうです。

1988年に58歳で腎臓がんを患い、3年後の生存確率は20%と医師から宣告されると、自分の財産を野外に隠し、人々に宝探しをさせるアイディアを思いつきます。

フェン氏はがんから生還を果たしますが、2020年に80歳を迎えるのを機に以前からのアイディアを実行に移し、ロッキー山脈のある場所に宝箱(中身は米国のイーグル金貨、ダブルイーグル金貨を中心とする265枚の金貨、鶏の卵ほどの大きさの金塊、古代中国で作られた翡翠像、コロンブス以前の金製の動物の工芸品、たくさんのルビー、エメラルド、サファイア、ダイヤモンドなど)を隠します。


そして、同年1月に出版した回顧録「追跡のスリル(The Thrill of the Chase)」に掲載した24行の詩に、隠し場所につながる9つのヒントを潜ませたことを明かします。

フェン氏が仕掛けた宝探しは、世界中のトレジャーハンターたちに熱狂を持って迎えられました。


フェン氏は後になって「人々を荒野に誘い、昔ながらの冒険と探検を始めるチャンスを提供する手段として、宝箱を隠した」と語っています。

「追跡のスリル」は2018年までに10刷を重ね、4万500部以上の売り上げを記録しましたが、フェン氏は本のセールスが目的だと誤解されないよう、収益をすべてがん治療の慈善団体に寄付したそうです。(この項続く)


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(08:00)

2023年01月18日

まずは最新のニュースからご紹介します。

アウトサイド誌などによると、フォレスト・フェンの宝箱に入っていた財宝を販売する1カ月にわたるネットオークションが昨年12月12日に終了し、1307946ドル(約1億6700万円)の売り上げを記録しました。

オークションにかけられたのは、ジャック・ステューフ氏が個人会社に売却した財宝のうち、青銅の10インチ四方の宝箱や竜の腕輪などを除いた476点で、入札には合計1643人が参加したそうです。

ステューフ氏がいくらで売却したかは公表されていません。

1万ドル以上で落札された財宝が8品あり、最も高かったのは549グラムの金塊で5万5200ドル(約700万円)、次に高かったのはフェン氏の2万語の自伝を収めた小さなガラス瓶で4万8000ドル(約610万円)でした。

フェンの宝箱はこれまで200万ドル相当と報じられてきたので、若干低めの評価となったようです。

ステューフ氏は先月、自身のブログで、フェン氏の宝箱の財宝をすべて手放したと表明していました。

「2年前に私の身元が明らかになった後、フェンの宝箱のファンたちから、自身の宝探しの冒険の記念に財宝の一つを売ってもらえないかという要望が寄せられていた。そうした機会を提供することができてうれしい」とも記しています。

宝探しに参加した記念に一つでもいいから財宝がほしいという気持ちは、わかる気がします。

ちなみにオークション会社のホームページによると、最も値段が安かったのは3グラムの砂金で900ドル(11万5000円)でした。(この項続く)


オークション
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(08:00)

2023年01月17日

埋蔵金伝説の調査はお休みし、今回からしばらくの間、「フォレスト・フェン(Forrest Fenn)の宝箱」についてリポートします。

フォレスト・フェンの宝箱といっても、すぐに思い当たる方は少ないのではないでしょうか。

米国ニューメキシコ州サンタフェの美術商、フォレスト・フェン氏が2010年1月、ロッキー山脈のどこかに隠したと発表した、金塊や宝石、レアコインなどが入った数百万ドル相当の宝箱です。

2020年6月にミシガン州出身の32歳の医学生、ジャック・ステューフ氏によってワイオミング州で発見されるまで、35万人(フェン氏による)もの人たちが宝探しに挑みました。

この話を最初に知った時には、いかにも米国らしい夢のある企画だなあと思ったのですが、探索中に少なくとも5人が命を落としたり、違法な発掘行為で何人もが検挙されたりするなど、どうも綺麗ごとばかりではなかったようです。

また、宝物が実際にどこに隠されていたのか、ステューフ氏がどうやってそこにたどり着いたかも明かされておらず、さまざまな憶測を呼ぶとともに、フェン氏を詐欺師だと訴える裁判沙汰も引き起こしています。

(フェン氏は回顧録「追跡のスリル(The Thrill of  the Chase)」に記した24行の詩に、宝箱の隠し場所に導く九つの手掛かりを潜ませたとしていますが、発見された後も、その答は公表されていません)

宝箱はもう存在せず、フェン氏も2020年9月に90歳で亡くなりましたが、謎解きは完全には終わっていないようです。

どこまで正確にお伝えできるか分かりませんが、ネット上の英文コンテンツを拾って、この前代未聞の宝探しの全貌に迫ってみたいと思います。(この項続く)


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(08:00)